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東京地方裁判所 昭和49年(行ウ)35号 判決 1980年10月29日

東京都府中市新町三丁目二二番二号

原告

諸石八郎

右訴訟代理人弁護士

斎藤展夫

鈴木亜英

阿部正義

同都同市分梅町一丁目三一番地

被告

武蔵府中税務署長

右指定代理人

竹内康尋

奥原満雄

酒井保一

中川昌泰

小笠原英之

辰尾明吉

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の申立

一  原告

1  被告が原告に対し、昭和四一年分、同四二年分及び同四三年分所得税につき昭和四五年三月九日付をもってした各更正及び各過少申告加算税賦課決定のうち、昭和四一年分については総所得金額五三万〇四八五円を超える部分、同四二年分については総所得金額五二万七四〇〇円を超え一四八万九九五九円までの部分、同四三年分については総所得金額五七万八〇〇〇円を超える部分を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決を求める。

二  被告

主文同旨の判決を求める。

第二当事者の主張

一  原告の請求の原因

1  原告は、昭和四三年一〇月二三日まで肩書住所地において家庭電気製品小売業を営んでいた者であるが、原告が被告に対し昭和四一年分、同四二年分及び同四三年分の所得税についてした確定申告、これに対して被告のした更正及び過少申告加算税の賦課決定、原告のした異議申立て及び審査請求並びにこれに対する異議決定及び審査裁決の経緯は、別表一(一)ないし(三)記載のとおりである。

2  しかしながら、被告のした前記各更正(以下「本件各更正」という。)及び各過少申告加算税賦課決定(以下「本件各決定」という。)のうち各年度の総所得金額が確定申告額を超える部分(ただし、昭和四二年分については審査裁決で維持された部分に限る。)に関するものは、後記五1記載のとおり違法な手続によるものであるのみならず、その金額を過大に認定した違法なものである。従って、原告は、その取消を求める。

二  請求の原因に対する被告の答弁

請求の原因1の事実は認めるが、同2の事実は否認する。

三  被告の課税手続及び課税根拠についての主張

1  推計の必要性

(一) 被告は、原告の本件各係争年分の事業所得について調査するため、所部職員を昭和四四年一一月二八日から翌四五年二月二五日までの間に四回にわたり原告が代表取締役の地位にある有限会社諸石電化サービスに臨店させた。しかし、最初の臨店の際には、原告は当日は都合が悪いとして調査に応ぜず、翌日になって電話で申告の間違っているところをいわなければ調査には応じられない旨を申し入れた。第二回目と第三回目の臨店調査の際には原告が不在であったため調査ができず、最後の臨店調査の際も、原告は、調査事項、調査理由を明らかにしなければ調査に応じられない等と主張し、所得金額の基礎となる帳簿書類等を一切提示せず、所部職員の質問に対しても取引の実態を明らかにしなかった。

(二) そこで、被告は、これ以上原告に対する調査を行っても実額によって所得金額を算出することは不可能であると認め、やむなく被告の調査によって判明した原告の仕入金額を基礎に売上金額、一般経費及び雇人費を推計により算定し、原告の所得金額を次のとおり算定したものである。

2  所得金額の算定

原告の本件各係争年分の所得金額及びその算出根拠は、次のとおりである。

(昭和四一年分)

原告の昭和四一年分所得税の課税総所得金額は、一三四万六〇〇〇円(一〇〇〇円未満切捨て。以下各年分の課税総所得金額につき同じ。)であり、その計算内訳は、別表二(一)記載のとおりである。

(一) 売上金額 一二一〇万九八五一円

(1) 売上金額については、その実額を把握することができなかったので、次のとおり推計によって算出した。

すなわち、原告と同じく武蔵府中税務署管内において、家庭電気器具販売業を営む個人のうち、昭和四一年ないし昭和四三年の各年分の所得税について、連続して青色申告書を提出しており、かつ、暦年事業を継続していて、右各年分の仕入金額がいずれも五〇〇万円以上二五〇〇万円未満であって所得税の申告納税額のある同業者を抽出したうえ、その昭和四一年分の青色申告決算書によって売上金額に対する差益金額の割合の平均値(以下「平均差益率」という。)を別表六(一)のとおりに求め、後記原告の昭和四一年分の総仕入金額九九二万五二三四円を平均原価率八一・九六パーセント(一から前記平均差益率一八・〇四パーセントを引いたもの)で除して売上金額を算出した。

(二) 売上原価 九九二万五二三四円

サワ商事株式会社四社から家庭電気器具等の商品を仕入れた合計金額であり、仕入先別の明細は別表三(一)のとおりである。なお、期首及び期末たな卸高を認定する資料の提示がなく、かつ、調査着手時に原告は既に個人事業を廃止していたため、これを同額とし、前記仕入金額を以て売上原価とした。

(三) 一般経費 七七万五〇三〇円

昭和四一年分の同業者の売上金額に対する一般経費の額の割合(以下「一般経費率」という。)の平均を別表六(一)のとおりに求め、原告の同年分の売上金額一二一〇万九八五一円に右平均率六・四〇パーセントを乗じて算出した。

(四) 雑収入金額 六〇万〇五四六円

原告が取引先である東京シャープ電機株式会社三多摩シャープ販売センター外三社から受け入れた割戻金、報償金、奨励金、リベート、サービス券及び東芝クレジット株式会社東京支社から受け入れた販売手数料等の合計金額であり、取引先別の明細は、別表四(一)のとおりである。

(五) 特別経費 四八万八九七五円

次の雇人費、減価償却費及び支払利息の合計金額である。

(1) 雇人費 四四万〇七九八円

昭和四一年分の同業者の売上金額に対する雇人費、専従者給与の合計額の割合(以下「雇人費率」という。)の平均を別表六(一)のとおり求め、原告の昭和四一年分の売上金額一二一〇万九八五一円に右平均率三・六四パーセントを乗じて算出した。

(2) 減価償却費 九〇〇〇円

原告が府中第一住宅(都営住宅)につき造作した建物付属設備にかかる減価償却費である。右建物附属設備は、前記住宅の軒下に増設した木造の設備で原処分の調査時には物品置場として使用されていたものであるが、原告が帳簿書類等を提示せず、その取得価額及び取得時期が明らかでないため、次のとおり推計により算出した。

少額の減価償却資産の取得価額の必要経費算入に関する所得税法施行令第一三八条(昭和四三年政令第九五号による改正後のもの)によれば、減価償却資産の取得価額が三万円未満であるものについては、その取得価額に相当する金額を、その者のその業務の用に供した年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することになっているが、被告は、原告に有利なように、右建物附属設備の取得価額を一〇万円と認定し、耐用年数を一〇年(減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和四〇年大蔵省令第一五号))として、所得税法第四九条(昭和四〇年法律第三三号による改正後のもの)に定められている減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法に従い定額法によって算定したものである。なお、被告が償却の方法を定額法としたのは、原告が償却の方法につき選定届出をしていないことによるものである(所得税法施行令(昭和四〇年政令第九六号)第一二五条)。

右減価償却の算式を示せば、次のとおりである。

(償却の基礎となる価格取得価額 残存価額) (耐用年数10年に対応する定額法の償却率) (減価償却費の金額)

<省略>

なお、償却期間、事業専用割合ともに一〇〇パーセントである。

(3) 支払利息 三万九一七七円

原告の八千代信用金庫府中支店からの借入金に対する支払利息である。

(六) 所得控除金額 一七万五〇四一円

次に述べる項目以外は、原告の提出した確定申告書記載のとおりである。

(1) 医療費控除の否認

原告は、確定申告において医療費控除額三四七六円を計上しているが、所得税法第八二条第二項第一号(昭和四二年法律第二〇号による改正前のもの)所定の医療費に関する支払領収証の添付、提示がないので控除の対象とはならない。

(2) 配偶者控除の否認

原告が配偶者控除(控除額一二万七五〇〇円)の対象としている諸石芳恵は、本名は首藤芳恵であって、原告の民法上の配偶者ではないから、控除の対象とはならない。

(3) 扶養控除の否認

原告が扶養控除(控除額五万七五〇〇円)の対象としている首藤陽子は、原告の民法上の親族ではないから、控除の対象とはならない。

(昭和四二年分)

原告の昭和四二年分所得税の課税総所得金額は、一三五万九〇〇〇円であり、その計算内訳は、別表二(二)記載のとおりである。

(一) 売上金額 一三三六万七六二二円

昭和四一年分(一)と同様の方法により、同業者の昭和四二年分青色申告決算書によって別表六(二)のとおり平均差益率一六・八三パーセントを求め、後記原告の昭和四二年分の総仕入金額一一一一万七八五二円を平均原価率八三・一七パーセントで除して算出した。

(二) 売上原価 一一一一万七八五二円

仕入先別の明細は、別表三(二)のとおりであり、期首及び期末たな卸高を同額として右仕入金額を以て売上原価としたことは、昭和四一年分と同様である。

(三) 一般経費 九三万九七四三円

昭和四二年分の同業者の一般経費率の平均を別表六(二)のとおりに求め、(一)の売上金額に右平均率七・〇三パーセントを乗じて算出した。

(四) 雑収入金額 八五万九一六五円

昭和四一年分と同様であり、取引先別の明細は、別表四(二)のとおりである。

(五) 特別経費 六一万四一八八円

次の雇人費、減価償却費及び支払利息の各金額の合計金額である。

(1) 雇人費 五六万八一二三円

昭和四二年分の同業者の雇人費率の平均を別表六(二) とおり求め、(一)の売上金額に右平均率四・二五パーセントを乗じて算出した。

(2) 減価償却費 九〇〇〇円

昭和四一年分と同じく、前記府中第一住宅の建物附属設備にかかる減価償却費である。

(3) 支払利息 三万七〇六五円

前記八千代信用金庫府中支店からの借入金に対する支払利息である。

(六) 所得控除金額 一九万五五〇〇円

配偶者控除(控除額一四万五〇〇〇円)の否認については昭和四一年分と同様であり、右以外は、原告の提出した確定申告書記載のとおりである。

(昭和四三年分)

原告の昭和四三年分所得税の課税総所得金額は、一六三万六〇〇〇円であり、その計算内訳は、別表二(三)記載のとおりである。

(一) 売上金額 一四一〇万一〇九二円

昭和四一年分(一)と同様の方法により、同業者の昭和四三年分青色申告決算書によって別表六(三)のとおり平均差益率一八・五九パーセントを求め、後記原告の昭和四三年分の総仕入金額一一四七万九六九九円を平均原価率八一・四一パーセントで除して算出した。

(二) 売上原価 一一四七万九六九九円

仕入先別の明細は、別表三(三)記載のとおりであり、期首及び期末たな卸高を同額として右仕入金額を以て売上原価としたことは、昭和四一年分と同様である。

(三) 一般経費 一〇九万四二四四円

昭和四三年分の同業者の一般経費率の平均を別表六(三)のとおりに求め、(一)の売上金額に右平均率七・七六パーセントを乗じて算出した。

(四) 雑収入金額 一〇二万三一八六円

昭和四一年分と同様であり、取引先別の明細は、別表四(三)記載のとおりである。

(五) 特別経費 七一万一六六一円

次の雇人費、減価償却費及び支払利息の合計金額である。

(1) 雇人費 六八万三九〇二円

昭和四三年分の同業者の雇人費率の平均を別表六(三)のとおりに求め、(一)の売上金額に右平均率四・八五パーセントを乗じて算出した。

(2) 減価償却費 七五〇〇円

前記府中第一住宅の建物附属設備にかかる減価償却費である。なお、原告は、昭和四三年一〇月二三日を以て事業を廃止しているので、年間償却額九〇〇〇円を期間あん分して計算し、その一二分の一〇を償却額とした。

(3) 支払利息 二万〇二五九円

前記八千代信用金庫府中支店からの借入金に対する支払利息である。

(六) 専従者控除の否認

諸石芙沙子は、首藤芙沙子が本名であって、原告の民法上の親族に当らないから、事業専従者控除(控除額一五万円)の対象とならない。

(七) 給与所得の金額 四〇〇〇円

総収入金額、給与所得控除額及び給与所得金額は、いずれも原告の申告額である。

(八) 所得控除金額 二〇万六〇九〇円

配偶者控除(控除額一五万七五〇〇円)の否認については昭和四一年度と同様であり、右以外は、原告の提出した確定申告書記載のとおりである。

3  以上のとおり、原告の所得税の課税総所得金額は、昭和四一年分一三四万六〇〇〇円、昭和四二年分一三五万九〇〇〇円、昭和四三年分一六三万六〇〇〇円であり、本件各更正による課税総所得金額は、昭和四一年分一三三万一〇〇〇円、昭和四二年分一二九万四〇〇〇円(ただし、審査裁決で維持された部分)、昭和四三年分一四〇万五〇〇〇円であって、いずれも前記金額の範囲内であるから、本件各更正には違法の点はなく、従って、これを前提とする本件各決定も違法ではない。

四  被告の主張に対する原告の認否

1(一)  被告主張1(一)の事実は認める。

(二)  同1(二)の事実は不知。

2  同2の事実について

(昭和四一年分)

冒頭の課税総所得金額は否認する。右金額は一六万六九〇〇円である。

(一) (一)(1)の事実のうち、被告が売上金額を推計したことは認めるが、推計計算をするに至った理由及び売上金額及び総仕入金額は否認し、その余の事実は不知。売上金額は一〇七九万六二四四円である。

(二) (二)の事実のうち、原告がサワ商事株式会社外四社から家庭電気器具等の商品を仕入れたこと、原告が期首及び期末たな卸高に関する資料を提示せず、かつ、調査着手時に個人事業を廃止していたこと、瑞穂産業株式会社、多摩東東芝商品販売株式会社及び東京シャープ電機株式会社三多摩シャープ販売センターを除くその余の仕入先及び仕入金額は認めるが、その余の事実は否認する。瑞穂産業からの仕入額は三六八万〇四五二円、多摩東東芝商品販売からの仕入額は四三九万二四三一円であり、従って売上原価は、九七一万五六九三円である。なお、被告主張の東京シャープ電機株式会社三多摩シャープ販売センターは、三多摩シャープ販売株式会社である。

(三) (三)のうち一般経費の金額は否認し、その余の事実は不知。右金額は五五万〇九五一円である。

(四) (四)の事実のうち、奨励金の点は不知、金額は否認する。取引先別の明細は、別表五(一)記載のとおりである。

(五) (五)のうち、雇人費率の計算方法は不知、その余は否認する。雇人費は一二万円、減価償却費は八万八三六六円、支払利息は六万二一八二円であり、従って、特別経費は、二七万〇五四八円である。

(六) (六)の所得控除金額及び医療費控除、配偶者控除、扶養控除に関する被告の主張は否認する。所得控除金額は三六万三五一七円である。

(昭和四二年分)

冒頭の課税総所得金額は否認する。右金額は、一八万六〇〇〇円である。

(一) (一)については、昭和四一年分(一)に対する認否と同様であり、売上金額は一二〇二万七八五九円である。

(二) (二)について昭和四一年分(二)に対する認否と同様であり、瑞穂産業からの仕入額は一一七万七七五八円、多摩東東芝商品販売からの仕入額は六三二万八五一七円であり、従って売上原価は、一〇五二万〇一九〇円である。

(三) (三)のうち一般経費の金額は否認し、その余の点は不知。右金額は七二万四六四一円である。

(四) (四)については、昭和四一年分(四)についての認否と同様であり、取引先別の明細は、別表五(二)のとおりである。

(五) (五)のうち、雇人費率の計算方法は不知、その余は否認する。雇人費は一八万円、減価償却費は一一万六三四七円、支払利息は四万九三九七円であり、従って、特別経費は三四万五七四四円である。

(六) (六)の所得控除金額及び配偶者控除に関する被告の主張は否認する。所得控除金額は三四万〇五〇〇円である。

(昭和四三年分)

冒頭の課税総所得金額は否認する。右金額は、二一万四〇〇〇円である。

(一) (一)については、昭和四一年分(一)に対する認否と同様であり、売上金額は、一一六〇万四〇九〇円である。

(二) (二)についても仕入額の点を除き昭和四一年分(二)に対する認否と同様であり、多摩東東芝商品販売からの仕入額は五二七万五六三〇円であり、被告主張の東京シャープ電機株式会社三多摩シャープ販売センターからの仕入は、三多摩シャープ販売株式会社からの仕入額三四五万二六三六円であって、売上原価は九九七万九六七七円となる。

(三) (三)のうち一般経費の金額は否認し、その余の点は不知。右金額は五八万七二九八円である。

(四) (四)については、昭和四一年分(四)についての認否と同様であり、取引先の明細は、別表五(三)記載のとおりである。

(五) (五)のうち雇人費率の計算方法は不知、その余は否認する。雇人費は二二万一七六〇円、減価償却費は一四万九六二五円、支払利息は四万円であり、そのほか貸倒損失金一〇万円、外注加工費五万一二六〇円がある。従って、特別経費は五六万二六四五円である。

(六) (六)は否認する。

(七) (七)の事実は認める。

(八) (八)の所得控除金額及び配偶者控除に関する被告の主張は否認する。所得控除金額は三六万三五九〇円である。

3  被告主張3の事実のうち、本件各更正による課税総所得金額は認めるが、その余は争う。

五  原告の反論

1  課税手続の違法

(一) 国税通則法第一六条違反

本件各更正は、国税通則法第一六条に違反する。すなわち、同条第一項第一号によれば、申告納税方式をとる所得税については、「納税者のする申告により確定する」ことを原則とするのであり、右規定の背景が費用をかけない効率的な徴税という観点のほかに、民主的な税制のあり方という憲法の精神にあることからすると、例外的に徴税者が調査し更正する場合には、極めて厳しい要件を充足することが要求されていると解すべきである。

(1) まず、課税処分のための調査権の限界についていうと、所得税法第二三四条は、「所得税に関する調査について必要があるとき」にのみ質問検査ができる旨規定している。そうして、納税義務の確定が前述したように第一次的には納税者によってなされるもので、課税庁による課税処分は第二次的、補完的なものであること、質問検査権の行使が権力的作用で被調査者の基本的人権の侵害と密接な関連があること、質問検査権の行使が罰則によって担保されていること等を考慮すると、所得税調査のための質問検査については、一般的必要性のみでなく、被調査者を特に調査する個別的かつ、合理的な必要性があることを要すると解するべきである。従って、本件において原告に関して質問検査権を行使するためには、前年度との比較、同程度の同業者との比較、景気の動向等原告について過少申告を疑うについての相当の理由がなければならない。しかるに、本件においては、原告に対して質問検査権を行使するについての具体的必要性はもとより、一般的必要性もなかったのであるから、右行使は違法というべきである。

(2) 所得税に関する調査の場合には、犯則調査や滞納処分のための調査とは異なり、あらかじめ被調査者を納得させるに足りるだけの調査の個別的、合理的必要性の理由を具体的に開示することが必要と解すべきである。そうして、憲法第三五条、第三八条違反の疑いを回避するためにも、さらには同法第三一条の適正手続の要請からしても、右の理由開示は、質問検査権の行使のための適法要件と解される。ところで、本件においては、被告は原告が昭和四三年中に約四〇〇万円の価額の不動産を取得していることから過少申告の疑いを持ったというのであるけれども、原告に対する質問検査権の行使については、このような具体的理由の開示がされていないから、右行使は違法というべきである。

(3) また、所得税法第二三四条の質問検査権の行使については、被調査者側の事情をできる限り考慮すべきであり、その意味で調査をする旨を被調査者に事前に通知することが必要と解するべきである。そうして、憲法第三一条、第三五条及び第三八条違反とされるのを回避するためにも、右事前通知は、質問検査権行使のための適法要件と考えるのが相当である。しかるに、本件においては、被告は四回も臨店調査をしたというけれども、いずれも事前の通知を欠いていたのであるから、被告の原告に対する本件質問検査権行使の手続は、違法たるを免れない。

(4) 所得税法第二三四条第一項第三号のいわゆる反面調査については、直前の納税義務者ではなく、法定の資料提出義務を負う者でもない者に対する調査であるから、調査権限を行使し得る場合は、同項第一号及び第二号の場合よりもさらに厳格に解さなければならない。従って、同項第一号の納税義務者等に対する調査だけではどうしても課税標準、税額等が把握できないことが明白となった場合にはじめて、調査範囲もその限りにおいて、同項第三号による調査が許されるものと解するべきである。ところが、本件においては、後述するように、原告は調査理由の具体的開示がされれば質問検査に応ずる意向を示していたにも拘らず、被告は、昭和四四年一二月初旬にはいわゆる反面調査を始めていたのである。従って、被告の本件質問検査権の行使手続には瑕疵があり、違法というべきである。

(5) 原告は、後述するように、被告の質問検査を拒否してはおらず、従って、被告としては実額課税が可能であった。原告の主張は、調査の具体的必要性を開示すべきであり、これを開示しないという手続的適正を欠いた調査の要求には応じないという点にあったのであって、これを以て質問検査の拒否というべきではなく、仮にこれが拒否であったとしても、質問検査の任意調査としての性格からいって正当なものである。また、前述したように、被告のした臨店調査は、すべて突然の来店であり、原告にとって商売上の著しい支障が生ずる恐れが十分にあったのであるから、原告がした調査延期の申出は、正当な理由があるものであった。

以上のとおり、本件更正は、適法な調査に基づかないでされたものであるのみならず、かつ、後述するように合理性を欠く課税処分というべきであるから、国税通則法第一六条第一項第一号の税務署長の処分によって納付すべき税額を確定することのできる場合に当たらず、従って、同条項に違反する違法の処分というべきである。

(二) 課税手続の違憲性

被告のした課税手続には、次のように違憲、違法な点があるから、これに基づく本件各更正は違法である。

(1) 被告の課税手続は、憲法第三一条に違反する。すなわち、前述したように、所得税調査に際しては、調査の必要性を開示することが必要なのにこれがなされておらず、質問検査についての事前通知がされておらず、納税義務者に対する質問検査に先行していわゆる反面調査を行い、また、後述するように、推計の必要性及び合理性を欠きながらされた推計課税であること、武蔵府中民主商工会破壊を目的として原告に対する調査が行われたこと等の点において、行政手続にも適用があると解すべき憲法第三一条の適正手続条項に違反する。

(2) 被告は、前述したように、原告に対する実額調査が可能であるのに反面調査を行った。このことは、反面調査の必要性が認められないのにあえて原告の財産調査を行った疑いがあり、これは、憲法第二九条で保障されている私有財産権に対する侵害である。

(3) 被告が原告に対する本件各更正について行った前記一連の行為は、原告が昭和四四年当時武蔵府中民商の副会長の地位にあって税制と税務行政の民主化運動の組織の中心にあったことを理由としてなされた見せしめ的な行為であって、調査の対象の選定及び調査の目的の点において結社の自由に対する侵害、介入行為というべきであり、憲法第二一条に違反するし、同法第一四条にも違反する。

2  推計の必要性

本件各更正は、所得税法第一五六条所定の推計課税によって行われているのであるが、推計課税は、実額課税とは異なり、非合理的要素が入り込む余地が多分にあり、その結果納税者に過大な課税負担を強いる恐れがあるから、推計課税によって更正をするには、推計課税の方法によらなければならない必要性のあることが手続の適法要件として必要である。一般にこの必要性を満たす事由としては、<1>帳簿類の不備、記帳責任者の不在、記帳方法の誤り等帳簿組織や経理手続等に欠陥があるというような形式的又は外形的理由、<2>記載内容の不一致、脱漏、虚偽等記帳の真実性を疑わしめる実質的理由、<3>税務調査に対する納税者の不協力等があげられている。しかし原告に対する本件各更正については、右に述べたいずれの事由も存在せず、従って推計の必要性を欠くものであったから、推計課税の方法によってされた本件各更正は違法である。

3  推計方法の合理性

本件推計課税には合理性がない。すなわち、被告は、本件各更正に際して、売上金額については同種同業者の平均差益率を用いて推計し、一般経費及び特別経費については売上金額に対して同じく同業者の平均経費率を乗じて算出している。しかしながら、右推計方法については、次のような問題がある。

(一) 被告主張のような推計方法は、原告の営業である家庭電気器具販売業にとって合理的ではない。右業界においては、販売会社及び製品ごとに取引態様が異なり、また、同じ製品でも大量一括取引と小規模取引で利益が大幅に異なるなど複雑な内容となっており、推計によって所得を算出すると最も誤差の大きくなる業種である。

被告が主張する後記委託販売手数料方式は、昭和四一年当時には既に行われなくなっており、いわゆる債権買取方式が大勢を占めていたものである。割賦販売手数料方式の経理面での処理方法は被告主張のとおりであるが、値引をした場合には、売上金額は仕入金額を下廻って計上されることとなるから、差益金額は零ではなくマイナスとなる。従って、被告主張の計算方法をとるとしても、値引率又は値引額が大きくなればなる程差益率は低下するものである。

(二) 同業者の選択が合理的でない。本件において選択された同業者は、立地条件、従業員数、設備等の営業規模、営業内容及び営業方針等の業態が原告のそれと近似しているといえるかどうか甚だ疑問である。

原告は、昭和三八年八月頃当時原告が居住していた都営住宅の一部(約一坪)を改造して家庭電気製品の小売業を始めた。しかし、住宅地であったため立地条件が悪く、資金もなかったため、商品の品揃えや商品構成等の店舗力も弱いうえ、従業員の雇入れもできず、また、宣伝力も弱かった。

家庭電気製品小売業界は、メーカーが巨大な力を有しており、商品の仕入について小売店が対等の立場で価格を決めることなどあり得ない状況であった。また、小売店の大小の差も大きく、原告のような小規模小売店と大型小売店との間には、その資金力、宣伝力において格段の差があるばかりか、メーカーは大型量販店には店舗側に有利なリベート体系で商品の仕入をさせるなど大きな差別があった。大型量販店は、各種リベートが多く、これを収入に見込めるため、メーカーの決めた定価より一五ないし二〇パーセントを値引したうえ、これを新聞折込ちらしなどで大量宣伝をしている。この販売価額は、場合により原告の仕入価額よりも安かったので、原告は常に極端に値引して販売せざるを得なかった。

このように家電業界はその規模によって仕入先、支払方法、販売方法等に大きな差が生じている。被告は、同業者として原告と同規模の店舗を選択したというけれども、当時府中市内に原告と同規模の店舗はなく、原告の店舗は最も貧弱かつ資金力が弱かったので、その値引率も高く、差益率も極端に低かった。従って、同業者の平均差益率を原告に適用して原告の売上高を算出すると、著しい不公平を生ずることとなる。

(三) 同業者が特定できず、その各差益率、経費率も信頼すべき科学的基礎を欠いている。

(四) 原告の生活実態からみても、本件各更正における所得金額が誤りであることが明らかである。すなわち、被告の原告に対する調査の理由は、原告の不動産購入の点にあったというのであるが、右不動産の買入価額は四〇〇万円であり、その資金は取引先からの借入によって賄ったものであって、自己資金は全くなかった。その返済方法も新店舗による売上高の増加を見込んだ月賦返済であり、毎月の返済額、生活費等と純利益を対照してみても、原告の申告所得額が妥当であったことが裏づけられるものというべきである。

六  被告の認否及び再反論

1  課税手続の違法の主張について

原告の課税手続の違法に関する主張は、それ自体失当である。すなわち、およそ租税債権は、すべて租税に関する法律の定めるところにより画一的かつ当然に成立しているものであって、課税庁の確定の手続を必要とする場合でもこれは租税に関する法律の定めるところにより既に成立している租税債権の内容を具体的に確認する手続に過ぎないのである。

従って、本件のように税額の多寡が争われている場合には、課税処分の違法性の存否は、右処分において認定された課税標準又は税額が客観的に正当とされる数額を超えているか否かによってのみ決せられるべきものであり、調査手続の適法違法の問題は、課税処分の適法違法の事由とはならないのである。そうすると、原告の本件各更正の調査手続の違法に関する各主張は、本件各更正の適法性とは無関係な事柄というべきであり、主張自体失当であるといわなければならない。

(一) 五原告の反論1(一)の国税通則法第一六条違反の主張は争う。同条第一項第一号の規定は、所得税を含む申告納税方式における税額の確定手続を定めたものであるが、その趣旨は、納付すべき税額は納税義務者の申告によって確定することを原則とするものではあるが、最終的な税額確定の権限は税務署長に留保されているのであり、その更正がないことを条件として当該申告が承認されるに過ぎないものである。従って、原告が確定申告をし、これに基づく税額を納付したからといって、原告の納付すべき税額が終局的に確定するものでもなければ、それによってただちに租税債務が消滅するものでもない。税務署長は、常に納税義務者がその義務を正しく履行したか否かを調査する職責を有し、当該調査の結果万一過少申告であることを発見した場合には、申告税額を更正しなければならないのである。本件においても、被告は、前述したとおりの調査を行った結果、原告の申告した課税標準及び税額等が被告の調査したところと異っていたので、国税通則法第二四条の規定に基づいて更正をしたものであるから、右処分になんら違法の点はない。

所得税法第二三四条第一項の質問検査権は、国税犯則取締法に定める質問検査権が具体的な犯罪の嫌疑がある者について刑事責任追及のためにその告発を目的として行使されるのと異なり、適正な納税の実現を確保するために認められているのである。すなわち、国家財政の基本となる徴税権の適正な運用を確保し、所得税法の公平確実な賦課徴収を図るという公益上の目的を実現するために収税官吏による実効性のある検査制度が存するのである(最高裁大法廷昭和四七年一一月二二日判決・判例時報六八四号一七頁参照)。従って、所得税法に定める質問検査権の行使は、過少申告の具体的嫌疑のある者に限らず、申告に係る所得金額の算定根拠が不明確でこれが正しいか否か検討する必要のある者に対しても許されるのである。そうして、そのような税務調査が存在することによって適正な申告が担保されているという現実の効果を看過することはできない。

また、質問検査権行使の必要性の判断は、右に述べた質問検査権の目的すなわち適正な納税の実現を確保するという目的の範囲内において、課税庁の現実に即した合理的判断に委ねられていると理解すべきである。すなわち、所得税法第二三四条第一項の規定は、国税庁、国税局又は税務署の調査権限を有する税務職員に対して、当該調査の目的、調査すべき事項、申請、申告の体裁内容、帳簿等の記入保存状況、相手方の事業の形態等諸般の具体的事情にかんがみ、客観的に所得税に関する調査について必要があると判断される場合には、職権調査の一方法として、同条第一項各号規定の者に質問し、又はその者の事業に関する帳簿書類その他当該調査事項に関連性を有する物件の検査を行う権限を認めた趣旨であり、この場合の質問検査の範囲、程度、時期、場所等事実上特段の定めのない実施の細目については、右にいう質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまるかぎり、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられているのである。また、暦年終了前又は確定申告期間経過前といえども質問検査が法律上許されないものではなく、実施の日時場所の事前通知、調査の理由及び必要性の個別的、具体的な通知のごときも、質問検査を行ううえの法律上一律の要件とされているものではない(最高裁第三小法廷昭和四八年七月一〇日決定・刑集二七巻七号一二〇五頁参照)。

取引先に対するいわゆる反面調査についても、原告に対する調査に関し必要がある場合には、その管轄地内のみならず管轄地外に所在する原告の取引先に対しても反面調査を行うことができるのである。

原告は、被告の質問検査を拒否していない旨主張するけれども、そうでないことは前記三被告の課税手続及び課税根拠についての主張1で述べたとおりであり、原告は自ら調査に応ずる気配を示さず、原告本人の調査によりその所得を把握することは不可能であったものである。

以上のとおり、本件課税処分に係る質問検査権の行使についてはなんらの違法もなく、かつ、右課税処分が合理性を欠くものとはいえないことも後述するとおりであるから、国税通則法第一六条第一項に違反することはない。

(二) 課税手続の違憲性の主張について

五1(二)の主張は争う。

(1) 所得税調査に際しての調査の必要性の開示、質問検査についての事前通知及び反面調査に関する原告の主張の理由のないこと、推計の必要性のあったことは前述のとおりであり、また、推計の合理性のあることは後述のとおりである。また、原告は、本件課税処分に係る調査が武蔵府中民商破壊を目的としてされたものである旨主張するけれども、そのような事実はない。被告が原告を調査対象として選定した理由は、<1>原告が昭和四三年中に価額約四〇〇万円の土地建物を取得していること、<2>それにも拘らず、原告の過去数年分の所得税確定申告書に記載されている所得金額が五〇万円前後の金額に過ぎないこと、<3>昭和四一年分及び同四二年分確定申告書に収入金額、必要経費の記載がないことなどに基づき、被告において調査をなすべき客観的必要性があると認めたものであり、原告が武蔵府中民商副会長なるが故に恣意的に調査対象に選定したものではない。従って、被告のした課税手続が憲法第三一条に違反するとの原告の主張は理由がない。

(2) 反面調査の必要性に関する原告の主張の理由のないことは前述のとおりであるから、憲法第二九条違反の主張もまたその理由がない。

(3) 原告が武蔵府中民商の副会長の地位にあったことを理由として本件課税処分がなされたものでないことは前述のとおりであるから、憲法第二一条、第一四条違反の主張は理由がない。

2  推計の必要性について

五2の本件更正については推計の必要性がなかった旨の原告の主張も争う。原告が被告所部職員の調査に際し、言を左右にしてこれに応じなかったばかりでなく、帳簿書類も提示せず、しかも右職員の質問に対して原告自身の事業に係る取引の実態すら明らかにしなかったことは前述のとおりである。そうして、そのため被告は、原告の記録等に基づき実額によってその所得金額を計算することが到底できなかったので、やむをえず推計により本件更正をしたものであるから、原告の主張は理由がない。

3  推計方法の合理性について

五3の本件推計方法には合理性がない旨の原告の主張も争う。被告の採用した推計方法は、前記三2(昭和四一年分)(一)記載のとおり、原告の仕入金額を基礎として、原告と事業規模等の類似する同業者の同業者率を適用して売上金額等を計算する方法であり、これは、所得金額を実額により把握できない場合に推計により得た蓋然的近似値をもって一応所得金額を認定するのに最も合理的と認められる比率法である。

(一) 家庭電気器具販売業にとって被告主義のような推計方法が合理的でないとの原告の主張は争う。同業者の選定方法は、前述したとおりであるが、その際被告は、割賦販売や委託販売の方法によりなされた商品の販売の経緯が明らかな同業者を選定し、右各販売方法に係る会計処理の差異が同業者率に及ぼす影響を考慮して、同業者の売上金額に右割賦販売の手数料を含め、委託販売のそれを除外したところによってこれを計算している。

すなわち、家庭用電気器具小売業にあっては、現金取引のほか、いわゆる割賦販売及び委託販売による取引が広く行われているが、これらの取引によって小売業者が収受する手数料等を大別すると、<1>割賦販売手数料、<2>委託商品販売手数料(以下「委託販売手数料」という。)及び<3>割戻金、報償金、奨励金等の名目で収受する、いわゆるリベートがある。この取引形態を図示すると、別紙一1ないし3のとおりである。

次に、割賦販売手数料を収受する場合と、委託販売手数料及びリベートを収受する場合における当該小売業者の売上等の経理についてみると、まず、割賦販売手数料方式をとる場合には、小売業者と顧客との間において商品売買契約が成立すると、小売業者は、帳簿上では、小売業者と割賦販売会社との間において売買契約が成立したものとして、当該商品の仕入金額と同額で売上金額を計上するのである。従って、この場合には、通常売上金額と仕入金額との開差として発生すべき差益金額は存在せず、小売業者は、割賦販売会社から別途割賦販売手数料を売上以外の収入として収受することになる(別紙一1参照)。なお、昭和四一年から同四三年にかけて東芝製品を除く他社の電庭電気製品の販売において行われていた仕入価額による商品買取方式も、実質的には割賦販売手数料方式と異ならない。

これに対し、委託販売手数料方式による場合には、小売業者は、顧客と割賦販売会社とを当事者として商品売買契約を締結し、受託商品を引き渡すに過ぎないのであるから、帳簿上売上金額及び仕入金額の計上は全く行わず、当該取引による取扱手数料として収受した委託販売手数料は売上以外の収入として収受することになる(別紙一2参照)。なお、昭和四一年から同四三年にかけて東芝製品について前後して行われていた寄託販売方式及び寄託販売切換方式も、実質的には委託販売手数料方式と同一である。

また、リベートについては、小売業者が一般商品及び特定商品を一定額以上仕入れた場合に、その仕入実績に応じて代理店等から収受するものであるから、当該リベートを収受するもととなった取引は、帳簿上すでに売上勘定及び仕入勘定に計上されているものであって、この場合にも、収受したリベートは売上以外の収入として収受することになるのである(別紙一3参照)。

ところで、差益率は、通常売上金額と売上原価との差額である差益金額を売上金額で除して計算するものであるが、右割賦販売手数料等の経理の仕方によっては、求める差益率が次のように相違することになる。

すなわち、割賦販売にあっては、売上金額と仕入金額とが同額であるため差益金額は発生せず差益率は零であるから、割賦販売を兼ねている場合に当該割賦取引に係る売上金額を単純に一般の売上金額に包含させて差益率を計算すると、総体の売上金額に占める割賦販売の売上金額の割合如何によって差益率に変動が生ずる。すなわち、割賦販売の売上金額の全体の売上金額に占める割合が低ければ差益率は高く、その逆の場合には差益率が低下することとなるのである。

従って、この場合に正確な差益率を求めるためには、総体の売上及び仕入の金額から割賦販売に係る売上及び仕入の金額を除外したところで計算するか、あるいは、総体の売上金額に別途割賦販売手数料を加算したところで計算しなければならないのである。

そうして、同業者の差益率を求める場合には、当該同業者の青色決算書において、売上及び仕入の金額を割賦販売に係るものとその他の取引に係るものとに分別することは、実務上不可能であるから、売上及び仕入の金額はそのままとして、別途割賦手数料相当額を売上金額に加算して差益率を計算するほかないことになる。

これに対し、委託販売にあっては、売上と仕入とはなんら計上されていないのであるから、委託販売を兼ねている者についての差益率を求める場合に委託販売手数料相当額を一般の売上金額に加算して計算することとすれば、当該金額に対応した売上原価が計算の基礎に算入されていないので、結果的には差益率が高まることとなり、特に委託販売による取引額が一般の取引額に比し多額である場合には、異常に高率な数値が導き出されることとなって不合理な結果となる。従って、委託販売手数料を差益率の計算に取り入れることは適当でない。

また、リベートについては、当該リベートを収受する基礎となった取引が既に売上金額と売上原価として経理されており、これにより通常の差益金額が算出されるものであるから、差益率の計算に当たって特にリベートを考慮する余地はないのである。

以上に述べた理由から、被告が本訴において同業者の差益率を算出するに当たっては、割賦販売手数料のみを売上金額に加算しており、しかも、当該同業者の青色決算書において明らかに割賦販売手数料であると認められるものに限定し、明確に区分できない手数料、リベート等は除外してある。なお、売上金額に加算した割賦販売手数量は雑収入に加算しないことはいうまでもない。

以上に述べたような家庭電気器具販売業者の会計処理の方法に即応した本件推計方法は、合理的というべきである。

(二) 五3(二)の主張も争う。本件において同業者率算出の基礎となった同業者は、前述したとおり、一定の要件を具備し、原告と同一地域内に事業所を有するものであって、この同業者の抽出基準には合理性があり、恣意性の介入する余地はない。さらに青色申告の決算書に基づき、特殊事情のある者を除外したほか、相当数(七名)の同業者を対象とされた売上原価の額から売上金額等を推計したものであるから、正確性及び一応の普遍性が担保されているというべきである。従って右同業者率を用いて、実額で把握することは、十分な合理性を有するものである。

原告は、資金力、店舗力及び宣伝力等の点において同業者に劣る旨主張するけれども、原告は、現に本件係争年中(昭和四三年)に土地建物を取得して新店舗を開設しているのであり、また、被告が採用した同業者率は、原告と規模の類以する一定範囲の同業者を全体として観察した平均の数値であって、当該同業者間に通常存在する程度の営業条件の差異は、当該平均値に吸収され捨象されたものとして無視し得るものというべく、また、右同業者を用いて所得金額を推計する方法が業種の同一性、営業規模の類以性、平均値算出過程の整合性等推計の基礎的条件に欠けるところがない以上、原告に存する営業条件の如何はこれをしん酌しなくても合理性がなくなるわけのものではない。また、原告の店舗が所在する府中市内に家庭用電気器具の大型量販店が店舗を設けたのは昭和四四年以降であって、本件係争年分について大型量販店の影響はあり得ない。

(三) 五3(三)の主張も争う。被告が同業者の氏名等を明らかにすることは、職務に関して知り得た秘密を漏らすことになり、所得税法第二四三条の規定によって許されないところであるから、同業者の住所氏名が不明であるといって同業者率算定の基礎となし得ないことはない。

(四) 五3(四)の主張も争う。原告の主張の基礎となっている資料は、信頼性を欠く断片的なものであるから、その主張を裏づけるものとはいえない。

第三証拠関係

一  原告

1  甲第一号証、第二号証の一ないし三、第三、第四号証、第五、第六号証の各一、二、第七ないし第一〇号証、第一一号証の一、二、第一二、第一三号証、第一四号証の一ないし三、第一五、第一六号証を提出。

2  証人前野円静、同中岩春子(第一回及び第二回)の各証言を援用。

3  乙第八号証の二ないし四の成立は不知、その余の乙号各証の成立(第一三号証の一ないし五については原本の存在を含む。)は、いずれも認める。

二  被告

1  乙第一ないし第五号証、第六号証の一、二、第七号証の一ないし三、第八号証の一ないし四、第九、第一〇号証、第一一、第一二号証の各一ないし三、第一三号証の一ないし五、第一四ないし第二一号証を提出。

2  証人小野文夫、同竹之内功、同西村鉄男、同柿原隆則の各証言を援用。

3  甲第一号証、第四号証、第五、第六号証の各一、二、第七号証、第八ないし第一〇号証、第一四号証の一ないし三、第一五、第一六号証の成立(第七号証及び第一五号証については原本の存在を含む。)はいずれも不知、その余の甲号各証の成立はいずれも認める。

理由

一  請求の原因1の本件課税処分の経緯等に関する事実は、当事者間に争いがない。

二  ところで、原告は、本件各更正及び本件各決定のうち各年度の総所得金額が確定申告額を超える部分(ただし、昭和四二年分については審査裁決で維持された部分に限る。)に関するものは、違法な手続に基づくものであるから違法である旨主張するので、以下この点について判断する。

1  推計の必要性

被告の主張三1(推計課税の必要性)(一)の事実については、当事者間に争いがない。

そうして、右当事者間に争いのない事実によれば、原告の本件係争各年分の所得金額を実額で算定するのに必要な帳簿書類等が提示されず、被告所部職員の調査に対して原告の協力が得られなかったのであるから、被告が原告の仕入先等の反面調査によって把握した仕入金額を基礎に右各年分の所得金額を推計等により算定したことに違法の点はないというべきである。

なお、証人竹之内功の証言によれば、原告は、異議審理の段階においても、原処分の際と同様調査に非協力的な態度をとり、実額を把握するのに必要な資料を提示しなかったことが認められるし、本訴においてもそのような資料は提出されていないから、推計等により原告の所得金額を算定するほかないものというべきである。

2  課税手続の違法の主張について

そこで、次に、本件課税手続を違法とする原告の主張について判断する。

(一)  国税通則法第一六条違反の主張について

原告は、本件各更正の前提としてされた調査における質問検査権の行使が違法であるとし、それ故本件各更正は適法な調査に基づかないでされたこととなるから国税通則法第一六条第一項第一号に違反する旨主張するので(五(原告の反論)1)、この点について判断する。

(1) まず、被告は、調査手続の違法は課税処分の適法性とは無関係である旨主張するけれども(六(被告の認否及び再反論)1)、国税通則法第二四条は、更正が課税庁の調査に基づいてされることを予定しているのであって、もし右調査手続に重大な瑕疵があり、当該課税処分が調査に基づかずにされのと同視し得る場合等には、右調査手続の瑕疵は、これに基づく課税処分の違法事由となると解すべきであるから、被告のこの点に関する主張はその理由がない。

(2) 原告は、所得税調査のための質問検査については、一般的必要性のみでなく、被調査者を特に調査する個別的、合理的必要性のあることが適法要件であると解すべき旨主張する。しかしながら、所得税法第二三四条第一項所定の税務職員の質問検査権は、調査権限を有する税務職員において、当該調査の目的、調査すべき事項、申請、申告の体裁、内容、帳簿等の記入保存状況、相手方の事業の形態等諸般の具体的事情にかんがみ、客観的必要があると判断される場合には、同条第一項各号掲記の者に対して質問し、又はその事業に関する帳簿、書類その他当該調査事項に関連性を有する物件の検査を行う権限を認めたものであって(最高裁第三小法廷昭和四八年七月一〇日決定・刑集二七巻七号一二〇五頁参照)、客観的事情から過少申告を疑うについての相当の理由がある場合に限定して質問検査を認めた趣旨と解すべきではない。

そうして、いずれも成立に争いのない乙第一八ないし第二〇号証及び証人小野文夫の証言によれば、原告が昭和四三年中に約四〇〇万円相当の土地建物を取得しているところ、過去数年間の申告所得額はいずれも五〇万円前後であること、本件係争各年分の申告内容については前記当事者間に争いのない事実のとおりであるけれども、昭和四一年分及び同四二年分の確定申告書には、いずれも所得金額の記載があるのみであって、収入金額及び必要経費の記載がないこと(なお、昭和四二年分の所得金額については、確定申告書の一枚目の所得金額の計算の欄には八三万一五〇〇円と記載されているが、二枚目の納める税金の計算の欄では五二万七四〇〇円と記載されている。)等の事情から、原告に対する本件調査が行われることとなったことが認められ、他にこの認定を左右するような証拠は存在しない。そうして、右認定の事実によれば、被告において具体的事情にかんがみ調査の客観的必要があると判断したことは相当であるから、その質問検査権の行使に原告主張のような違法の点はない。

(3) 次に、原告は、税務職員の所得税調査に際しては、その個別的、合理的必要性の理由を具体的に開示すること、調査をする旨を事前に通知することがいずれもその適法要件であると解すべき旨主張する。しかしながら、税務職員が質問検査を実施する場合においては、その範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については、質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において相当な限度にとどまる限り、権限ある税務職員の合理的な選択にゆだねられているし、また、実施の日時場所の事前の通知、調査の理由及び必要性の個別的、具体的な告知は、法律上一律の要件とされているものではないと解される(前掲最高裁決定参照)。そうして、前記認定に係る原告に対し本件調査が行われるに至った経緯、当事者間に争いのない調査の際の状況等に照らせば、具体的な調査理由の開示及び調査を行う旨の事前の通知がされなかったからといって本件質問検査権の行使が違法となるとは解せられないし、他にそのように解するのを相当とするような事実を認めるべき証拠は存在しない。従って、この点に関する原告の主張を採用できない。

(4) さらに、原告は、所得税法第二三四条第一項第三号のいわゆる反面調査について、同項第一号の納税義務者等に対する調査だけでは目的を達せられないことが明白となった場合に限って許容されると解すべき旨主張する。

しかしながら、調査の客観的必要性が認められる以上、実定法上特段の定めのない質問検査の実施の細目については、一定の限度内で権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられていること前記のとおりであり、反面調査をいついかなる段階でどのように実施するかについても同様である。もちろん、反面調査を実施する際しては、納税義務者や取引先等の第三者の私的利益との衡量において相当な限度にとどまるよう配慮することが必要ではあるけれども、常に納税義務者等に対する調査によっては目的を達せられない場合に始めて反面調査を実施することが許されるものと解さなければならないものではない。

そうして、前記判示の事実関係によれば、被告の所部職員は、一応原告に対する臨店調査をしたところ原告は都合が悪いとして応ぜず、翌日になって電話で申告の間違っているところをいわなければ調査には応じられない旨を申し入れたというのであるから、被告所部職員がその後反面調査に着手したからといって、直ちにこれを違法とすることはできないし、他に原告の主張を肯認させるような事実を認めるに足りる証拠は存在しない。

(5) 最後に、原告は、被告の質問検査を原告は拒否しておらず、また、原告の調査延期の申出には正当な理由があった旨主張するけれども、前判示の事実によれば、原告が被告所部職員の調査に応じない態度を続けたものというほかないことは明らかである。もっとも証人小野文夫、同前野円静の各証言によれば、昭和四五年二月二五日の第四回目の臨店調査の際に、原告において同年三月一八日武蔵府中民商の事務所で調査をして貰いたい旨被告所部職員に述べたことが認められるけれども、右日時は確定申告期限経過の直後であって、常識的に被告所部職員として調査を実施することが極めて困難であることが明らかな時期であるし、また、前記各証言によれば、原告としては、あくまで調査の具体的必要性を開示することを調査を受ける前提としていたことが認められるから、原告において被告所部職員の質問検査を拒否していないとの原告の主張は理由がない。

以上の次第であるから、本件更正が適法な調査に基づかないでされたものとはいえないし、また、合理性を欠く課税処分とはいえないことは後述のとおりであるから、本件各更正が国税通則法第一六条第一項第一号に違反するとする原告の主張は、その理由がない。

(二)  課税手続の違憲性の主張について

(1) 原告は、被告の課税手続が憲法第三一条に違反する旨主張するけれども、調査の必要性の開示、質問検査の事前通知、反面調査及び推計の必要性に関する原告の主張の理由のないことは前述のとおりであり、また、推計の合理性及び他事考慮に関する原告の主張の理由のないことは後述のとおりである。従って、これらを理由とする原告の憲法第三一条違反の主張は、その理由がない。

(2) 次に、原告は、被告所部職員が反面調査の必要性が認められないのにあえて原告の財産調査をしたとして憲法第二九条違反を主張するけれども、反面調査につき原告主張のような違法のないことは、前判示のとおりであるから、右主張もまたその理由がない。

(3) 次に原告は、被告が本件各更正について行った一連の行為が当時原告において武蔵府中民商の副会長の地位にあったことを理由とする、いわゆる他事考慮に基づくものであるから、憲法第二一条、第一四条に違反する旨主張する。そうして証人前野円静及び同中岩春子(第一回)の各証言によれば、本件調査及び本件各更正がされた昭和四四、五年頃原告が武蔵府中民商の副会長の地位にあり、また、その以前においては同じく組織部長をしていたこともあることが認められる。しかしながら、右調査ないし更正等がこれを理由とする、いわゆる他事考慮に基づいてされたようなことを認めるべき証拠は存在しない。かえって、前判示の事実関係によれば、被告所部職員は、客観的な必要性ありと判断して原告に対する調査を実施し、その結果が原告の確定申告と喰い違っていたため被告において本件各更正をしたものであるから、原告主張のような他事考慮はなかったものと認めるのが相当である。従って、この点に関する原告の主張もまた、その理由がない。

三  次に、原告は、本件各更正は、所得金額を過大に認定した違法がある旨主張するので、この点について判断する。

(一)  売上金額

いずれも成立に争いのない乙第八号証の一、第一二号証の一ないし三、証人西村鉄男の証言によって成立を認める乙第八号証の二ないし四並びに右証人及び証人柿原隆則の各証言によれば、次の事実が認められる。すなわち、被告は、原告と同じく武蔵府中税務署管内において家庭電気器具販売を営む個人事業者のうち、昭和四一年ないし同四三年の各年分の所得税につき連続して青色申告書を提出しており、かつ、暦年事業を継続していること、各年分の仕入金額がいずれも五〇〇万円以上二、五〇〇万円未満の範囲内にあって所得税の申告納税額のあること等の条件をみたす同業者七人を抽出したこと、右同業者についてその各年分の所得税青色申告決算書に基づいて売上金額と売上原価を調査し、これにより各年の平均差益率(売上金額から売上原価を控除した差益金額の売上金額に対する割合の平均値)を求めたところ、その結果は、別表六(一)ないし(三)記載のとおりとなった(なお、昭和四三年分同業者等の差益率は、同表記載の二二・〇〇ではなく、二二・〇一であると認められるが、全体の平均値には影響がない。)。

そうして、右認定の事実によれば、被告が本訴において主張する同業者の平均差益率算出の対象となった同業者は、原告と同様府中市及びその周辺の調布市及び狛江市に事業所を有する同業者であることが明らかであって、同業者の抽出基準に合理性があり、抽出について被告の恣意が介在するとは認められないし、また、基礎資料は青色申告決算書に基づいているから正確性も担保されているというべきである。なお抽出数も同業者の個別性を平均化するに足りるものというべきであり、推計方式それ自体にも合理性がある。従って、右同業者の平均差益率によって原告の売上金額を推計するのは合理的というべきである。

この点に関し、原告は、家庭電気器具販売業は販売会社及び製品ごとに取引態様が異なる等取引内容が複雑で、推計によって所得を算出すると誤差が大きくなる業種であるとして、本件推計課税の合理性を争うので、考えるのに、前掲各証拠にいずれも成立に争いのない乙第一一号証の一ないし三、第一四号証を合わせれば、次の事実を認めることができる。家庭電気器具販売においては、現金販売の場合には特段問題はないけれども、割賦販売の場合には小売店の経理上の処理に種々の方式があり、これが差益率に影響を及ぼすこととなる。すなわち、割賦販売の方式には、寄託販売方式、寄託販売切換方式、債権買取方式、仕入価額による商品買取方式及び実売価額による商品買取方式等があり、各メーカー系列の割賦販売会社がそれぞれの時期に各種の方式を採用していたのであるが、本件係争期間中においては、原告及び前記同業者の割賦販売取引先である各社のうち、東芝家庭電器月販株式会社(昭和四三年一〇月一六日以降は東芝クレジット株式会社)は寄託販売方式ないし寄託販売切換方式を採用しており、他の日立月販株式会社、東京三菱電機商品月販株式会社及び東京シャープクレジット株式会社等においては、いずれも仕入価額による商品買取方式が行われていた。仕入価額による商品買取方式というのは、小売業者と顧客との間で事実上商品割賦販売契約が成立すると、小売業者は帳簿上では小売業者が割賦販売会社に仕入価額で商品を売り上げたこととして処理し、割賦販売会社が顧客にこれを割賦販売し、小売業者に販売手数料を支払うという販売方式である。従って、この方式の場合には、売上金額と仕入金額は同額となるから、通常右両金額の開差として生ずる差益金額は存在せず、小売業者の収益としては、割賦販売会社から収受する販売手数料があるだけである。これに対し、東芝商品について行われていた寄託販売方式は、割賦販売用の商品を他の商品と区分し、割賦販売会社から小売業者が寄託を受ける形式をとっており、従って、顧客との間の割賦販売契約の当事者も小売業者でなくて割賦販売会社となる。小売業者としては、当該商品については仕入も売上も計上せず、割賦販売会社から販売手数料を収受するだけである。寄託販売切換方式は、割賦販売の対象とすることのできる商品が限定され、商品管理が一本化できない等の寄託販売方式の欠陥を補うために考案された方式であって、小売業者は、全商品につき一たん仕入を計上するが、割賦販売契約が成立すると当該商品の仕入を取り消して割賦販売会社からの寄託商品に切り換え、それ以後は寄託販売方式と同時に処理するものであり、当該商品についてけっきょく売上も仕入も計上されず、販売手数料を収受するだけである点も寄託販売方式と変りはない。

ところで、差益率は、売上金額と売上原価との差額である差益金額を売上金額で除して算出するものであるが、右に述べたよう 割賦販売についての経理の仕方の差異によって、求める差益率の数値に変動が生ずる。すなわち、仕入価額による商品買取方式の場合には、前述したように、売上金額と仕入金額とは同額であるから差益金額は発生しないこととなり、従って、右割賦販売に係る売上金額を単純に一般の売上金額に包含させて差益率を計算すると、割賦販売に係る売上金額が全体の売上金額に占める割合が大きくなればなる程差益率の数値は実際よりも低く算出されることとなる。この場合、正しい差益率を求めるためには、総体の売上及び仕入の金額から右割賦販売に係る売上及び仕入の金額を除外して計算する方法も考えられるが、そうすると割賦販売についての収益率が差益率に反映しないこととなるし、また、同業者の青色申告決算書において売上及び仕入の金額を割賦販売に係るものとその他の取引に係るものとに分別することが実務上不可能であるから、現実にはそのような方法をとることができない。そこで、同業者の差益率を算出するに当たっては、被告主張のように、売上及び仕入の金額は、割賦販売に係るものも含めそのままとして、現金取引の場合の差益金額に相当する割賦取引に係る販売手数料相当額を売上金額に加算して差益率を計算するのが妥当である。これに対し、寄託販売方式ないし寄託販売切換方式の場合には、前述したように、小売業者については売上と仕入が計上されていないのであるから、寄託販売等に係る販売手数料相当額を売上金額に加算して計算すると、差益率は実際以上に高く算出されることとなる。従って、同業者の差益率の算出に当たっては、寄託販売方式ないし寄託販売切換方式に係る販売手数料は売上金額に加算しないのが相当である。また、いわゆるリベートについては、当該リベートを収受する基礎となった取引が既に売上金額と仕入金額として経理されており、これにより、通常の差益金額が算出されているのであるから、差益率の計算に当って特にリベートを考慮せず、後述するように原告の仕入先の反面調査によって、別途原告のリベートによる収入を実額で把握するのが相当である。

以上述べたように、本訴において同業者の差益率を算出するに当たっては、被告主張のように、割賦販売に係るもののうち、仕入価額による商品買取方式によるものについての販売手数料のみを売上金額に加算し、それも当該同業者の青色申告決算書において右のような性格の販売手数料であることが明らかなもののみに限定すべきである。そうして、東芝商品についての寄託販売方式ないし寄託販売切換方式による取引についての販売手数料は、明確に区分できない販売手数料、リベート等とともに、別途雑収入として売上金額に加算しないのが相当である。以上のとおりに認められ、他にこの認定、判断を不当とするような事実を認めるべき証拠は存在しない。そうして、被告が同業者の差益率を算出するに当たってとったこのような方法は、差益率の性格、前述した家庭電気器具販売の実態等に徴し合理的な算出方法というべきである。原告は、家庭電気器具販売業は販売会社や製品ごとに取引態様が異なり、また取引の規模によって利益が異なる等複雑な内容となっているから、推計による誤差が大きくなる業種である旨主張するけれども、仮りに家庭電気器具販売の取引に原告主張のような傾向があるにしても、原告の所得を実額で把握することができないため推計の必要性があることは前記認定のとおりであるし、右業種に推計課税の方法をとること自体が不合理であるとまで認めさせるに足りる証拠は存在せず、また、他により合理的な推計方法があることの主張、立証もないのであるから、原告の主張は理由がない。また、原告は、被告主張の寄託販売方式等は、本件係争期間である昭和四一年当時には既に行われなくなっており、割賦販売会社が小売業者から顧客に対する売掛金債権を買い取る債権買取方式が大勢を占めていた旨主張し、証人中岩春子の証言(第二回)中には右主張に合致する部分があるけれども、前記認定に供した各証拠と対比するときは採用できず、他に右認定を左右するような証拠は存在しない。また、原告は、仕入価額による商品買取方式で値引した場合には売上金額は仕入金額を下廻ることとなり、差益率は低下すると主張するけれども、値引は業者全体に共通の問題であるし、値引の場合の経理方法としては、一般経費中に値引損として計上すれば足りることが前掲各証拠によって認められるから、原告主張のように値引があるからといって被告主張の差益率の算出方法が不合理となるわけのものではない。

さらに、原告は、本件係争年当時原告の店舗の立地条件や資金力等が劣っていたことを理由として、同業者の選択が合理的でなく、そのような同業者の平均差益率を原告に適用することは著しく不公平である旨主張する。しかしながら、本件における同業者の抽出基準に合理性があって恣意の介入する余地がなく、基礎資料も正確性が担保されており、抽出数も同業者の個別性を平均化するに足りると認められることは、前記認定のとおりである。原告の主張する営業規模の点については、同業者の仕入金額の範囲を抽出基準で定めることによって一応の配慮がされているわけであるし、立地条件や資金力あるいは大型量販店による影響等についても同業者率が個々の差異を捨象した平均値として算出されている以上、原告に右平均値による推計を全く不合理とする程度の顕著な個別的条件の差異があると認められない限り右同業者率によることを不当といえないのであり、原告にそのような意味での個別的条件での差異があることを認めさせる証拠は存在しない。また、右同業者の氏名、住所が明らかにされておらず、これを特定できないとしても、これは課税庁に守秘義務があること(国家公務員法第一〇〇条、所得税法第二四三条)からいってやむを得ないことなのであって、これを以て推計を違法ないし不当ということはできない。

最後に、原告は、原告の生活実態からいっても、原告の申告所得金額が妥当である旨主張するけれども、原告がその根拠とする甲第一四号証の一ないし三の日計表も、係争期間の一部に関するもののみであるだけでなく、その正確性を裏づけるに足りるだけの証拠がない。その他甲第一五号証及び証人中岩春子の証言(第一回及び第二回)によっても、原告の主張を認めるには足らず、他にこれを認めるに足りる証拠も存在しない。

なお、付言するのに、本件同業者の選定については、次のような問題点がある。すなわち、同業者の抽出に際し営業規模の類似性を確保するため、各年分とも仕入金額が五〇〇万円以上二、五〇〇万円未満の範囲内にあることを抽出基準に加えてあることは前述のとおりであるが、割賦販売に係る東芝商品については、売上及び仕入とも計上しないという計画方法がとられていることもまた、前判示のとおりである。ところで、証人西村鉄男の証言によれば、本件において選定された七名の同業者中には割賦販売に係る東芝商品を取り扱っていた者はいなかったことが認められるのに対し、原告は、後述するように、本件係争年中に相当額のその種の東芝商品を取り扱っていたものである。従って、原告の仕入金額には右割賦販売に係る東芝商品に関するものが含まれていないことになるので、このような経理方法の相違のために、原告の営業規模は、前記同業者に比較して仕入金額に正確に反映しておらず、実際よりも過少に評価されていることになる。しかしながら、この点については、抽出基準として仕入金額を前記のように定めたのも一応のめどとしてであってその金額も絶対的な基準としての性格を持っているわけではないし、また、原告が取り扱っている割賦販売に係る東芝商品の全取扱商品の中における比率も、後述するとおり、それ程大きなものではない。のみならず、前記認定に係る別表六(一)ないし(三)記載の七名の同業者それぞれの仕入金額と差益率とを検討すると、仕入金額の規模と差益率との間に必ずしも有意の相関関係はないと認められるから、原告の仕入金額によって代表される営業規模が他の同業者と比較して実態よりも過少に評価されていることは、同業者の選定ひいてはこれによる平均差益率の算出を不合理ならしめることにはならない。

以上に述べたとおり、いずれの点からいっても、本件推計に不合理な点があるとはいえない。

そこで、前記のようにして算出した別表六(一)ないし(三)の昭和四一年ないし同四三年分各同業者の平均差益率から平均原価率(一から右平均差益率を引いたもの)を算出し(昭和四一年八一・九六パーセント、同四二年八三・一七パーセント、同四三年八一・四一パーセント)、これで後記各年分の売上原価(昭和四一年九九二万五二三四円、同四二年一一一一万七八五二円、同四三年一一四七万九六九九円)を除して算出すると、昭和四一年が一二一〇万九八五一円、同四二年が一三三六万七六二二円、同四三年が一四一〇万一〇九二円となる。

(二)  売上原価

原告が昭和四一年から同四三年にかけ、多摩東東芝商品販売株式会社ほかから家庭電気器具等の商品を仕入れたこと、原告が期首及び期末たな卸高に関する資料を提示せず、かつ、調査着手時に個人事業を廃止していたこと、仕入先及び仕入金額のうち、昭和四一年分のサワ商事株式会社及び角田無線電機株式会社に関するもの、同四二年分のうち右両者及び柳川無線電機株式会社に関するもの、同四三年分のうち右三社及び瑞穂産業株式会社に関するものがそれぞれ別表三(一)ないし(三)記載のとおりであることは、当事者間に争いがなく、いずれも成立に争いのない乙第一ないし第三号証によれば、その余の仕入先及び仕入金額も別表三(一)ないし(三)記載のとおりであり、けっきょく、その合計額は、昭和四一年が九九二万五二三四円、同四二年が一一一一万七八五二円、同四三年が一一四七万九六九九円であることが認められる。なお、期首及び期末たな卸高を認めるべき証拠がないことは前述のとおりであるから、これを同額として、右仕入金額を以て売上原価と推認するのが相当である。

(三)  一般経費

前記(一)の冒頭の認定に供した各証拠によれば、昭和四一年ないし同四三年の前記同業者の一般経費率の平均が別表六(一)ないし(三)記載のとおりであること(昭和四一年六・四〇パーセント、同四二年七・〇三パーセント、同四三年七・七六パーセント)が認められる。そうして、前記認定に係る各年の売上金額に右平均一般経費率を乗じて算出すると、各年分の一般経費は、昭和四一年が七七万五〇三〇円、同四二年が九三万九七四三円、同四三年が一〇九万四二四四円となる。

しかしながら、ここで問題となるのは、前述したように、原告の各年の売上金額には割賦販売に係る東芝商品に関するものが含まれていないことである。右商品の割賦販売についても現金販売ないしは東芝商品以外の割賦販売の場合と同様一般経費を要することは当然であるが、前記のように割賦販売に係る東芝商品に関するものが含まれていない売上金額に平均一般経費率を乗じたのでは、右割賦販売に必要とされる一般経費が計上されていない結果となる。そこで、この場合の一般経費の金額を算定しなければならないのであるが、他にこれを適確に算定しうる資料が存在しないので、いずれも成立に争いのない乙第七号証の一ないし三により認められる各年の東芝製品の割賦販売手数料の金額(昭和四一年一四万〇八〇〇円、同四二年二四万三八八〇円、同四三年二四万四五四〇円)が右割賦販売についての収益となるわけであるから、これを各年の平均差益率で除して得られた金額(昭和四一年が七八万〇四八七円、同四二年一四四万九〇七九円、同四三年が一三一万五四三八円)が右割賦販売手数料に見合う売上金額相当額であると考え(右割賦販売についての収益の比率と他の現金販売ないし東芝商品以外の商品についての割賦販売についての収益の比率との間に無視できないような差異があることを認めさせるような証拠は存在しない。)、これに各年の平均一般経費率を乗じて得られた金額、すなわち、昭和四一年が四万九九五一円、同四二年が一〇万一八七〇円、同四三年が一〇万二〇七七円となるが、右各金額が東芝商品の割賦販売に要した一般経費と推認するのが相当である。そうして、これを前記右割賦販売以外の分についての一般経費と合算すると、けっきょく、各年分の一般経費は、昭和四一年分が八二万四九八一円、同四二年分が一〇四万一六一三円、昭和四三年分が一一九万六三二一円となる。

なお、原告の営業規模が実際よりも過少に評価されていることが同業者の選定ひいては平均一般経費率の算出を不合理ならしめるものでないことは、平均差益率について述べたのと同様である。

(四)  雑収入金額

いずれも成立に争いのない乙第四、第五号証、第六号証の一、二、第七号証の一ないし三によれば、原告の昭和四一年ないし同四三年分の割戻金、報償金、リベート、サービス券及び東芝家庭電器月販株式会社からの販売手数料等の雑収入が別表四(一)ないし(三)のとおり、昭和四一年分が六〇万〇五四六円、同四二年分が八五万九一六五円、同四三年分が一〇二万三一八六円(多摩東東芝商品販売株式会社分は七〇万五四一〇円であると認められるので、合計額は一〇二万三一八八円となるが、被告主張額の範囲で認める。)となる。

(五)  特別経費

(1)  雇人費

被告は、各年分の雇人費を同業者の平均雇人費率によって推計しているのであり、前記(一)の冒頭の認定に供した各証拠によれば、同業者の昭和四一年ないし同四三年の平均雇人費率は、別表六(一)ないし(三)記載のとおりとなることが認められる。しかしながら、原告のように小規模の個人事業者の場合には、雇人費の要否及びその金額は、個別的な事情、例えば事業専従者の有無ないしその数、事業主等の年齢、健康状態、稼働能力等によって相当の変動を免れないものであり、現に前記同業者のなかにも雇人費が零の者も一名存するし、他の各同業者の雇人費率の間にもかなりの差異が認められるのである。そうして、他に雇人雇の存否及びその金額を認めるべき資料が全く存在しなければ、右のような推計方法によることもやむを得ないと考えられるのであるが、本件においては、原告は、雇人費の実額として、被告主張額を下廻る金額(昭和四一年分が一二万円、同四二年分が一八万円、同四三年分が二二万一七六〇円)を主張しており、さらに、原告において右各金額を上廻る雇人費を支出していたような事実を認めるべき証拠も存在しない。このような事実関係のもとにおいては、被告主張のような同業者の平均雇人費率によって雇人費を推計するのは、相当であるとは思われないのであって、少なくとも、原告において実額として主張している限度において雇人費を認めるを以て足りると解するのを相当とする。そうすると、けっきょく、雇人費は、昭和四一年分が一二万円、同四二年分が一八万円、同四三年分が二二万一七六〇円となる。

(2)  減価償却費

証人中岩春子の証言(第一回)により成立を認める甲第五号証の一、二並びに証人小野文夫の証言及び弁論の全趣旨によれば、原告が本件係争期間中店舗として使用していた都営住宅に造作した建物付属設備についての減価償却費が被告主張のとおり、昭和四一年、同四二年分が各九、〇〇〇円、同四三年分が七、五〇〇円であると推認される。原告は、減価償却費として、昭和四一年分が八万八三六六円、同四二年分が一一万六三七四円、同四三年分が一四万九六二五円である旨主張するけれども、その具体的内容についてなんらの主張、立証がないから、前記被告主張の各金額を以て相当と解すべきである。

(3)  支払利息

原本の存在及び成立に争いのない乙第一三号証の一ないし五並びに証人小野文夫の証言によれば、原告は、八千代信用金庫府中支店からの借入金に対する利息として、被告主張のとおり、昭和四一年分三万九一七七円、同四二年分として三万七〇六五円、同四三年分として二万〇二五九円を支払っていることが認められ、右は必要経費に算入すべきである。原告は、支払利息として、昭和四一年分が六万二一八二円、同四二年分が四万九三九七円、同四三年分が四万円である旨主張するけれども、その具体的内容についてなんらの主張、立証がないから、前記被告主張金額を以て相当と解すべきである。

(六)  所得控除

いずれも成立に争いのない乙第一八ないし第二〇号証及び弁論の全趣旨によれば、原告は、各年の確定申告において、所得控除として、昭和四一年分については社会保険料控除四、六三〇円、生命保険料控除三万〇九一一円、損害保険料控除二、〇〇〇円、基礎控除一三万七五〇〇円、合計一七万五〇四一円を、同四二年分については社会保険料控除八、五〇〇円、生命保険料控除三万七五〇〇円、損害保険料控除二、〇〇〇円、基礎控除一四万七五〇〇円、合計一九万五五〇〇円を、同四三年分として社会保険料控除九、〇九〇円、生命保険料控除三万七五〇〇円、損害保険料控除二、〇〇〇円、基礎控除一五万七五〇〇円、合計二〇万六〇九〇円を申告しており、右はいずれも正当と認められる。

なお、原告は、このほか、昭和四一年分について医療費控除、配偶者控除、及び扶養控除を、同四二年分及び同四三年分については配偶者控除を主張するようであるけれども、いずれも被告主張のような理由(首藤芳恵及び首藤陽子が原告の配偶者ないし親族に当らないことは、いずれも成立に争いのない乙第九号証、第二一号証により明らかであるし、原告が医療費に関する支払領収証を確定申告書に添付、提示したことを認めるべき証拠も存在しない。)により認容することはできない。

(七)  給与所得の金額

前掲乙第二〇号証及び弁論の全趣旨によれば、昭和四三年中原告に四、〇〇〇円の給与所得(収入金額一〇万円、給与所得控除額九万六〇〇〇円)があったことが認められる。

(八)  専従者控除

前掲乙第二〇号証によれば、原告は、昭和四三年分の確定申告に際して、首藤芙沙子につき事業専従者控除を申告していることが認められるが、同人が原告の親族に当たらないことは、前掲乙第九号証、第二一号証により明らかであるから、これを認容することはできない。

(九)  貸倒損失金及び外注加工費

原告は、昭和四三年分につき貸倒損失金一〇万円、外注加工費五万一二六〇円を必要経費として主張するけれども、その具体的内容についての主張、立証がないから、そのような支出はなかったものと推認するのを相当とする。

四  結論

以上に述べたとおり、原告の課税総所得金額は、昭和四一年分が一六一万六九六四円、同四二年分が一六四万五七五七円、同四三年分が一九九万六六四九円となり、本件各更正にかかる総所得金額(昭和四二年分については審査裁決で維持された部分)は、いずれも右各金額の範囲内であるから、本件各更正は、いずれも適法であり、従って、これを前提とする本件各決定もまた適法というべきである。よって、原告の本件各請求は、いずれもその理由がないから失当としてこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤田耕三 裁判官 菅原晴郎 裁判官杉山正己は、転補につき、署名捺印することができない。裁判長裁判官 藤田耕三)

別表一(一)

昭和四一年分

<省略>

別表一(二)

昭和四二年分

<省略>

別表一(三)

昭和四三年分

<省略>

別表二(一)

<省略>

別表二(二)

<省略>

別表二(三)

<省略>

別表三(一)

<省略>

別表三(二)

<省略>

別表三(三)

<省略>

別表四(一)

<省略>

別表四(二)

<省略>

別表四(三)

<省略>

別表五(一)

<省略>

別表五(二)

<省略>

別表五(三)

<省略>

別表六(一)

一 昭和四一年分

<省略>

別表六(二)

二 昭和四二年分

<省略>

別表六(三)

三 昭和四三年分

<省略>

別紙一

1 割賦販売手数料(売上及び仕入を同額として計上し、別途販売手数料を収受する。)

<省略>

注一 ○印内の番号は、取引の順序を示す。

注二 かっこ書内の数字は、商品の価額等を仮定したものである。

注三 この取引事例は、六回払いの割賦販売とした。

別紙一

2 委託販売手数料(売上及び仕入をともに計上しないで、別途販売手数料を収受する。)

<省略>

別紙一

3 リベート(一定額以上の仕入実績及び特定商品の仕入実績等に基き収受する。)

<省略>

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